アイ・ミス・ユー

責任は取らなくて結構です。



昼休み、今野との諸事情によりいつものようにお弁当を作っていくことが出来なかった私は、コンビニで買ったサンドイッチを食べていた。


みんながこぞって席を取る休憩室の一角で、親友の結子がそれはそれは美味しそうなお弁当を広げている。
おおかた今頃どこかで、彼女の恋人である金子くんも頬を緩ませながら同じおかずの入ったお弁当をつついていることだろう。


「仕事が忙しいってわけでもないのに、コンビニの昼食なんて珍しいね」


セールやフェア中じゃない限り、節約のためにお弁当を作ってくることを知っている結子が、私のサンドイッチを見て不思議そうにつぶやく。
彼女からしてみれば、特に深い意味なんて無いのだろうが。


「ちょっと寝坊しちゃって」

「そうなんだ」


服だけは同じものを着て出勤してなるものかと、タクシーを飛ばしてもらって猛スピードで自宅で着替え、急いで会社へと出勤した。
おそらく今野はズボラだしそこまで頭が回らないから、ワイシャツもネクタイもそのままで出勤しているんじゃないだろうか。


朝から店舗の方に出ずっぱりで、ヤツとはラブホを出てから顔を合わせていないから分からない。


なにしろムンクの叫び状態の今野を放って先にさっさとラブホを後にしたのは私の方だ。
ひとりで焦りまくっているヤツを見るのが面倒くさいので、一万円札をぶん投げて出てしまったのだ。


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