アイ・ミス・ユー


「確かに山崎先輩って綺麗だけど毒舌だし、言いたいことズバッと言っちゃうしサバサバしてるし、年下じゃ物足りなくなっちゃいそうですもんね〜」


褒めてるのか悪口なのかよく分からないことを言いながら私を眺める田上に、一応笑顔を返しておく。


物足りない、っていうか。
年上の方が人生経験豊富だし、知らないことを知っているし尊敬できる。
それが年下には感じられないというだけのことだ。


そう思うと昨夜今野と寝たのは色々とマズかった。
後悔してももう遅いけど。


その後悔に上塗りするように、どこからか「お疲れ様です〜」という声が聞こえてきた。


私たち3人が振り向くと、しょぼくれた1匹の犬……にも見える、今野拓本人が登場。
ヤツは機嫌をうかがうようにして私を見ている。


まさか私と今野がそんなことになったなんて知る由もない結子が、笑顔で「お疲れ様」と返していた。


「あの、山崎さん……。ちょっといいですか?」


早速のご指名。


もちろん、結子と田上は怪訝そうな顔になって私の顔をガン見している。


こういうことに配慮出来ないのも年下男子の良くないところ。
……というか、今野拓の良くないところ。
単にこの男の人間性と性格が現れているだけのような気もした。


「5分で終わらせてよ」


仕方なく、席を立った。


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