アイ・ミス・ユー
「だって………………」
今野の顔が見れなくて、足元に視線を置いたままつぶやくように絞り出した。
「だって、全然話しかけてくれなくなったじゃない。ジンギスカンにもカラオケにも誘ってくれなくなったじゃない。仕事中だって素っ気ない態度で必要なことしか話してくれなかったじゃない」
話しながら、じんわり涙が浮かびそうになる。
なんで今野のことで泣かなきゃならないの、という悔しい気持ちに包まれながらも、抑えきれない。
おまけに声まで震えてきた。
「昨日だって女の子と仲良さそうにデートしてたじゃないっ。そんな奴に私のことが好きだなんて言われたって信じられない!」
「……昨日のは、俺の姉ちゃんです」
「………………………………………………………………え?」
あまりにも予想外の答えが返ってきたので、返事をするまでにかなりの時間を要した。
「ね、姉ちゃん?」
「はい。年子でひとつ上の姉ちゃんです。市内の会社に勤めてて、偶然会ったんです。で、飲みに行こうって誘われて………………」
━━━━━なんてこった。
だから彼女はこう言ってたのか、「拓ちゃんがいつもお世話になってまーす」と……。
いや、そこは「弟がお世話になってます」でしょーが!
姉ちゃん、頼むよ!
「ね、分かったでしょ?山崎さんがいかに俺の話を最後まで聞いてないか」
ふふ、と笑った今野の久しぶりの笑顔で、どこかホッとする自分がいた。
あぁ、私、この顔が見たかったのかも。
「年下は対象外ってハッキリ言われて、俺……ショックすぎてしばらく本当に立ち直れなくて。1ヶ月引きずったんですよ。山崎さんに話しかけるのが怖くて、傷つくのが怖くて………………」
「ごめん…………。本当にごめん」
今野の切なる想いは、十分に伝わった。
悪いのは私。
彼の気持ちを、聞く前から否定し、そして自分の気持ちも否定し続けてしまった。
だからこんなにも遠回りしてしまったのだ。