アイ・ミス・ユー


明るく元気なわけではない。
相手の話を聞き出すのがうまいわけでもない。
たぶん、どちらかと言えば口下手な方だなという話し方。


少し色白で、サラサラした猫っ毛ぽい髪の毛はワックスかなんかでいい具合に無造作にセットされていて。
黙っているとシャープな目元が無愛想な印象を与えてくるけれど、そうはさせないまぁるい穏やかな微笑み。


━━━━━なんか、ザ・草食系男子って感じ。


失礼なことに、彼の見た目と話し方の第一印象から勝手にそう思った。


彼が私をどんな風に思ったかは分からないけれど、大した話はしなかった。


ざわつく会議室で用意されたお弁当を食べながら、彼が私に尋ねてくる。


「この会社、本命だった?」

「うん、大本命。おばあちゃんの代からうちはみんな小坂インテリアで家具買ったりしてたの。昔からCMも見てたし、慣れ親しんでたから。全国チェーンのリーズナブルな家具屋さんも悪くないけど、道内の素材に囲まれて暮らすってコンセプトが、なんかいいなぁって。あったかくて優しいなぁって。…………あ、なんかしゃべりすぎちゃった」

「ううん。すごい熱いね。伝わってきた」


ついでに言うと、おばあちゃんがよく自慢話で話してくれることがあって。
小坂インテリアがまだ全然浸透していない頃、初代社長の小坂社長から直々におばあちゃんがテーブルを購入したというエピソードがある。


社長は腰が低くて誠実な青年で、当時新婚だったおばあちゃんがおじいちゃんに相談もせずに即決で購入してしまったと。
その頃は訪問販売だったから、仕事から帰ってきたおじいちゃんが新しいテーブルがあるのを見て驚いていたらしいけど。


なにかあるにつけて「あそこの家具はいいものばっかりだ」「結ちゃんも買うなら小坂さんのところで買いな」なんて言われるから、私までファンになってしまった。


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