君に捧ぐ、一枝の桜花
さわさわと花が揺れる。
吉野は考える。今、何処にいるのだろう。と。
しかし、吉野はそれをすぐに止めた。どうでもいいのだ。一度交わった縁は強い。それが防人と精霊ならばなお、強い。だから、また逢えるのだ。

「ねえ、綺麗だね。吉野」

一瞬、記憶がそう囁いたのかと思った。

「久しぶりに来た友達を無視するのかい?」

枝の真下を見る。

「やあ、久しぶり。僕、参上」

にっと笑う紛れもない明がそこに立っていた。吉野は枝から地面へと軽やかに降りてきた。信じられないと明を凝視している。無理もなかった。明は死んだ頃と全く変わらない姿でいるのだから。

「実際、自分の目で見たほうがいいと思ってね」

くすくすと笑う表情も変わっていない。呆気に取られる吉野だったが、自らの友に向かって笑ってみせる。

「まったく・・来るのが、早いぞ。明」


それは、かつて心臓病の少年と

桜樹の精霊が過ごした日々。


一応、FIN
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