どこまでも、堕ちていく。

久しぶりに会う友達も多い。
浮かれすぎてもう何年も履いていなかった派手めのワンピースを選んだ。
最後に自分の姿を鏡に映してファッションの最終確認。

「よし。ばっちり!」

いざ部屋のドアノブに手を掛けようとした時、反対側からドンッと荒っぽくドアが開いた。


「パ、パパー!?」

目の前にいたのは朝ゴルフに行ったはずの旦那、道弘だった。

「ゴルフはどうしたの?」

目の前に立つ道弘の顔は険しくて、今までに見たことのない表情だった。
彼は唖然とする私の腕を引っ張り壁に押し付けた。

「いた…っ、何するの」
「…」
「パパ?」
「アイツに会いに行くんだろ?」

頭上から道弘の低い声が響いた。
その声は少しだけ震えていて、彼の怒りをうかがい知れるようだった。

「俺の留守を見計らってあの男と会うつもりだろ? よく考えたな」
「違…っ!」
「渋谷のイタリアンレストラン"エム"に11時」
「…え?」
「メールで何度もやり取りしてたよね」

私のほうに自分のスマホ画面を見せる道弘。
そこには私と道弘のメールのやり取りが表示されていた。
いつの間に…?

「彩、ロック掛けるのは良いけど暗証番号バレバレなんだよなぁ」
「…」

ショックだった。
道弘が私のスマホをチェックして、メールデータを自分のスマホに移動させていたなんて。

「とりあえず腕離して。雅紀が見たら…」
「雅紀は下の階にいるよ。今日のお出かけは中止になったよって言っといたから」

道弘はそう言ってニコッと微笑んだ。

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