ケンショウ学級
僕達を苦しめ続けた『ケンショウ学級』はこうして4人の生存者を残して終わるはずだった。

だけどアイツがそんなことで満足するわけがなかったんだ。

目を覚ましたそこは何も無い狭い空間だった。

「……っ。ここはどこだ?みんなは?」

そこに春馬や佐野くんら原田さんの姿はない。奇妙なまでに真っ白の部屋は畳2畳分にも満たない狭さで、壁が凸凹している椅子に座っているのがやっとらの空間だった。

目の前には机代わりになりそうな突起に、パネルと専用のペンが置かれていた。

「密室……パネルにペン、いったい何をさせようって言うんだ?」

僕の服はいつの間にか、元着ていた制服に戻っていた。足枷もなくなっていたが、足枷によって擦れた傷は治っていなかったので夢でした。なんてオチにはならないようだ。

そう、まだアイツの実験は続いているのだろう。

そんなことを考えていると、その小さな空間に放送が流れ出した。

「優秀な諸君おはよう。君たち4人は幾つもの検証を実施し見学し、その真偽のほどを僕と一緒に見届けてくれた。最後に君たちに僕から提案をしたい」

ここまできても姿を現すでもなく、変声機で声を変えている白々しさに吐き気がする。なにが提案だ。

「これから君たち4人には選択肢が2つ用意される。手元にパネルとペンがあるだろう?」

奇妙な空間に用意されていたこのパネルとペンは、最後の実験の道具ということなのだろう。

「君たちはあの教室で聞いたね。そして、僕も真実を答えた君たちは「この教室に犯人がいる」か?と問い、僕は「この教室に犯人がいる」と確かに答えた。

君たちに用意された選択肢はまさしくそれだ。そこにあるパネルに『犯人と思う人の名前を書く』のか『何も書かない』かだ」

僕はその放送を聞きながら、あの時春馬が僕に言った言葉を思い返していた。無意識に僕は拳を握りしめている。

「君たちのいる部屋には毒ガスを散布する装置が備え付けられている。

誰かがパネルに名前を書き、もしそれがアイツの名前と一致した場合には正解した人を解放し、不正解者と回答をしなかった人には致死率100%の毒ガスを散布する」

もしこのパネルに名前を書きアイツを当てることができたらクリア。もし、違った人の名前を書いたら罪のない友達を殺すことになるのか……

「ただし、誰もそのパネルに名前を書かない場合には殺傷力を弱めた毒ガスを全員のいる部屋に散布します。弱い毒ガスであれば致死率は20%どほど、5人に1人は死ぬ計算だけど運が良ければ4人とも生きて解放されることになります」

これは……あの本に書いてあったアレに似ている。



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