イジワル御曹司と花嫁契約
「ありがとう」


 素直にお礼を言った私に、彰貴は少し驚いた顔をして、そして柔和に微笑んだ。


「じゃあ、いってきます」


「いってらっしゃい」


 彰貴は身を屈んで、ベッドに座っている私にキスをした。


心が、満たされる。


彰貴が出て行くのを見届けてから、ノロノロとベッドから起き上がった。


 着替えてからリビングに行くと、トレイに乗った朝食がテーブルに置かれていた。


エッグベネディクトとサラダとフルーツ、そしてグレープフルーツジュースとポットに入った温かい紅茶があった。


 グレープフルーツジュースを一口飲んで、他は食べられそうにないと思った。


でももったいないので、タッパに朝食を詰め、水筒には紅茶を入れた。


 こんな美味しそうなものを食べずに捨てるなんて、私にはできない。


ありがたく昼食にいただこう。


食べ放題も使い放題も乗り放題も、一定の金額は払っているわけで、これを使わないということは損している気がするのだ。


むしろ元を取ってやろうという貧乏根性が発動してしまう。


この悲しい貧乏人の性を彰貴に知られてしまったから、今後も上手く利用されるかもしれない。


案外単純で扱い奴だなと思われてそうで癪だけど、どうしようもない。


だって、もったいないんだもの。


 やばい、時間がない。


残りのグレープフルーツジュースを一気に飲み干し、出掛ける支度に取り掛かった。


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