イジワル御曹司と花嫁契約
「今日からお前は、俺のシンデレラだ」


 満足気に微笑み見上げる彼の瞳が優しくて、思わず胸がドキリと高鳴った。


「ふ、ふりでしょ!」


 なぜか照れてしまって、彼の顔から目を背けた。


意識していないからつい忘れてしまうけれど、こいつの顔はとびきりかっこいいのだ。


直視したら、私の中で眠っている女の本能が胸をドキドキさせてしまう。


「そうだ。ふりだが、対外的には俺の婚約者だ。宜しくな」


「よ、よろしく……」


 なかなか火照りが取れない顔を上げることができず、左足に履いたハイヒールに目を落とす。


母のハイヒールは、私の足には少し大きい。


ピッタリとはまったシンデレラのガラスの靴とは違う。


そのことが、私と彼の間柄を物語っている気がした。


 ……婚約者のふり。


私は本当のシンデレラではない。


 どうしてだろう。


胸が少しチクリと痛んだ。


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