壊れるほど抱きしめて



終業時間の十分前には仕事も終わり、今日のノルマは達成できた。
派遣社員の竹島(たけしま)くんも、同じ作業の繰り返しで、右腕が痛いと言っていた。


「明日絶対に右腕、筋肉痛になってそうです」


「でも凄く作業は早かったし、竹島くんなら残業しなくてもノルマは達成出来ちゃうんじゃないかな?仕事が早かったら、間に合ってない所の手伝いに回されちゃうかもしれないですよ」


「慣れてきたらそうなりそうですね。でも残業とかは大丈夫ですし、俺頑張ります」


そんな話をしていたら、坂木くんが歩いてる姿が目に入った。


「あの男の人、凄くクールだけどカッコイイですね。男の俺でもカッコイイと思うし、モテますよね?」


「え、あ、うん」


急に坂木くんの話をされて返事に戸惑った。
その時に終業のチャイムが鳴り、竹島くんは「お疲れ様です」と言って事務所に向って行った。


坂木くんの姿を見るだけで、胸の鼓動が速くなる。


好きになる前は気にならなかったのに、胸が苦しくなるくらい好きな気持ちが溢れそうになる。


この想いは届かないとわかっていても……。




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