確かに君は此処に居た
9.明の独り言
時刻は真夜中。
僕が帰ってくると、伽夜はすでに寝ていた。

「………」

ベッドの傍らに座ってみる。スタンドの光だけが部屋を照らし、時計の音だけが薄い闇に響いていた。

ああ、あれから何年経つのだろう。
あの頃のあどけない面影は、
今もうっすらと残っている。

「…伽夜」

小さく名を呼んでも、伽夜は夢の中。
安らかな寝息は乱れない。
手を頬へと伸ばす。けれど、触れられない。

「…やっぱり幽霊の身体じゃ、駄目だね…」

でも
触れられる位置に
声が届く位置に
今は居る。

それは長年、僕が
願ってきた願いの1つ。

君は今まで何を感じ、見てきたのか。
それは知らない。

「知らない。けれど…覚えていなくても、僕は…」

あの幼い日々を
君が覚えていなくても

「…僕は伽夜が好きだよ…っ」

それが揺るぎない事実。
けれど、涙が出てくるのは何故だろう…
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