彼女は空を見つめ続ける。
しばらくして、男の子は軽く口を開いた。

「ぼくの名前は『ワサビ』だ。山に葵で

ワサビって読む、覚えてね。」

山葵と名乗る男の子は誇らしげに

語る。まるで今までの沈黙がなかったかの

ように、平然としていた。

「俺は──」

「あぁ。いや!言わなくても結構。

郁実だろ?ずぅ~っと見てたからな」


郁実はあっけらかんとしていると


「いくら、今日父さんがいないからって

夜遊びはだめだぞ。」

もう山葵が年下には見えなかった。


────ぼわぁん...

「なんで知っているの?」と聞こうとした

時また視界がボヤけ出した。

< 28 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop