ねぇ、運命って信じる?
プロローグ

「ねぇ、待って……どこに行くの…いなくならないでっ!」
…ピピピッ ピピピッ……
朝陽が射し込むベッドの上で目を覚ました。いつもはすっきり起きれるのに……今日は違った。久々に目覚めがよくない…うなされてしまったからだ。
「夢か……はぁ…最近は見なかったのに。」
アラームを止めようと手を伸ばしたが…携帯をついこの前買い替えたばかりでなかなかうまくいかない…。またひとつため息がこぼれた。
就職が決まり、引っ越したこの部屋。1LDKのこの部屋は少々古いがその分家賃が安く、多少の釘や画鋲をしてもOKで収納も多いし、結構気に入っている。
引っ越した理由は…会社から近いから、家賃が安かったから。ただそれだけ…学生時代のアパートから通えない距離じゃない。…別に彼との思い出がない所に引っ越したかったわけじゃない。自分に言い訳してみる。無駄だってわかってる。それでも言い訳してないと胸が押しつぶされそうだから…
「あ、時間やばい。」
職場へ徒歩で通える距離で便利…とはいえゆっくり準備している暇はない。なぜかって?…少しでも長く眠りたいから。…時間が合えばバスもあるけど特に朝は学生で満員になることが多いからあまり乗らずに徒歩通勤している。運動にもなるし節約にもなるから、朝一や荷物が多い時以外は利用しない。
真っ直ぐに伸びた黒く長い髪をキッチリ結び、急いで仕度をすませ会社へと向かう。
2度寝さえしなければ朝ごはんを食べて出るがことも多いけど、急いでいるときは栄養補助食品に頼っている。とはいえほぼ毎日頼っぱなしなんだけどね…

今日もいつもどおりの日常を過ごすと思っていた…あの瞬間までは。

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