ねぇ、運命って信じる?
最終章

△▼△▼△▼△▼△▼ side美羽

しばらくして、工藤が告白すると聞きつけた美羽は告白してきた相手が他の人とお揃いの指輪をはめていたらいい気分はしないだろうと思い、指輪を外すことにした。今度また安い指輪を探しに行こうと思いながらもなかなか行けず時だけが過ぎていってしまった。

その間に工藤は指輪を差し出しながら
「この指輪をお揃いではめてください!」
詩織先輩に付き合ってほしいと告白したようだ。表向き詩織先輩が折れた形だが”美羽には世話かけたから特別に教えてあげるね。実は工藤から告白されて結構嬉しかったんだ。”って照れくさそうに教えてくれた。
「あの時紺野に言われなかったら決心がつかなかったよ。背中を押してくれてありがとな。」といたく感謝しているようで”俺に出来る事は何でも言って。詩織先輩の次に優先するから。”と若干の惚気を聞かされながら…これは結構大きな貸しだな。有効に使おうと心の中で企んでいることなど工藤は知らない。


だが、美羽が指輪を外していたことで式の招待客だったアイツが言い寄る隙をあたえることになってしまうとは思いもよらなかった。
元彼、田中達也は営業職らしく会社の同僚の結婚式に招待されていたようだ…


田中とは高校1年の7月に告白されて付き合いだした。付き合いは5カ月余りで終わりをとげたのだが。こちらのことなどお構いなしに
「あの時は愛莉ちゃんが学校で一番可愛いって空気で…彼女と付き合うとステータスになる!みたいな雰囲気だっただろ?…でも愛莉ちゃんはその時先輩と付き合ってたから、これは無理かな?って思ってたんだけど、なんか破局寸前らしいって噂聞いて気持ちが揺れたんだよ。美羽のことだって本当に好きだっだ…。でも、あの時は俺が愛莉ちゃん目当てで美羽に近づいたって噂の方が先に流れたから…信じてもらえないだろうけど、愛莉ちゃんが目当てで美羽と付き合ってたわけじゃないってことは分かってほしい。また美羽と再会できて、本当に嬉しい。良かったら連絡先教えてくれないかな?また今度ゆっくり話したいし。」
空気が読めないんですか?あなたは?…他の招待客からの視線が痛いんですけど…どう考えても田中が女性に困っているようには見えないのに、なぜわざわざ私に声をかけてくるのだろう?他人のフリしてくれればいいのに。
再会したクズ男こと元彼田中は何やら言い訳めいたことをほざいているようだが、それを信じるほど私もバカではない。だって…あのとき田中が友人のひとりと話しているのを聞いてしまったんだから…。

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放課後、愛莉と教室に戻った時だった…扉に手をかけたその時、中から声が聞こえてきてその内容が私と愛莉に関することだったから教室に入り損ねてしまった。廊下まで聞こえてくる声には聞きおぼえがあった…当時の彼氏田中達也だ。彼に告白され付き合いはじめたのは5ヶ月ぐらい前から…彼は友人も多く割と目立つ生徒だった。
田中の友人が「そういえばお前、あの噂マジなわけ?愛莉ちゃん目当てってやつ。愛莉ちゃん本当に先輩と別れたらしいな…。」
「あぁ、あの噂ね。…まぁ親友の彼氏だったら警戒されないだろうし、愛莉ちゃんが先輩と別れたんなら慰めるフリして距離を縮めてその後に美羽と別れればいいかな。とは思っているけど。」
友人が”お前サイテーだな”とケラケラと耳につく笑い声のなかで、まず噂が本当だったんだ。次に私は利用されてたんだ。最後に愛莉が親友の元彼と付き合うとか考える時点でコイツ詰めが甘い。ぶさけんな、愛莉はそんな子じゃない。嫌な予感がして隣を見れば、全身真っ黒のオーラをまとった愛莉が今にも殴り込んでいきそうな事に気付き必死で止めた。
「お願い、愛莉。気持ちは嬉しいけど今ここでこれ以上惨めになりたくない…だから帰ろう。」
涙を浮かべながら訴えた。
「…わかった。でも今日はうちに泊まっていって…それで思いっきり悪口言いあおう!ねっ?」
愛莉の気遣いが心に染みた…
「ありがとう。今日は愛莉の家に泊まらせてもらうね。」
帰りに愛莉の家に寄らせてもらい思い切っり泣いたり、悪口を言いあった。愛莉は自分のせいだと何度も謝ってくれたけれど
「愛莉は何も悪くないし、あのクズ男の魂胆に気付けなかった私がバカなんだよ。だから愛莉が気に病む必要はないから。それに愛莉だって先輩と別れたこともう広まっていたなんてショック受けたでしょ…」
「うん。だってまだ、美羽にしか話してないんだよ?…っていうことは向こうが言いふらしたってことでしょ。結局、向こうはステータスってやつが欲しかっただけなんだよ。…私のこと好きなわけじゃなかったんだって、やっぱりショックだった…」
「そもそもステータスって何?愛莉と付き合うとステータスとか誰が言い出したんだろうね。…私たちもう少し男を見る目磨いたほうがいいかも。」
「うん。そうかも。」
翌日は休みだったのでそのまま愛莉宅に泊まらせてもらい、夜中まで話は続いた。愛莉にすべてを話すうちだいぶ気分も落ち着いた。愛莉もまた、元気になっていた。お互いが弱っていた時だったけど、愛莉がいてくれて本当に良かったと心からそう思った。
田中は愛莉が先輩と別れたと聞いてから少しずつよそよそしくなり、そのうちに年があけたら私とは別れたことになっていた。毎年恒例行事の家族で初詣に行ったんだけど、5歳上の従兄、奏くんといる所を目撃したのか…休みあけに別れた理由が私が初詣に他の男といたと言いふらして自分が被害者みたいな態度を貫き通していた。私としても彼の話を聞いた後はなるべく関わりたくなかったので周りからの視線が痛かったけど、肯定も否定もしなかった…事情を知る愛莉は憤慨してくれたけど愛莉以外にも私を信じてくれる子がいたことで正直救われた。
本当は噂を耳にした頃からこの人は愛莉目当てなのかもしれない。と感じていた。やたら愛莉の事を聞いてきたり会いたがっていたから。それでも信じたかった…ただ現実から目を逸らしたかっただけなのかもしれない。
別れた後のバレンタインにたくさんのチョコレートをもらっているのを見たけれど、全然胸は痛まなかった。その時、彼への恋愛感情はすべて消え去っていることに気づいて胸がスッとした。

田中はその後愛莉に近づこうしたが愛莉はそれを断固拒否した。何度か挑戦したようだが、愛莉の態度は変わることなく、その内に他のキレイどころといわれている先輩と付き合いだした。田中が先輩と付き合いだした頃からか、いつの間にか私には年上の彼氏がいるらしいと噂なっていた…でも、噂を信じていない人も多く、何人かに告白されたがどうしても愛莉目当てなのでは?と信じられなくて…その後誰とも付き合わなかった。その度に噂の信憑性が増していき2年の2学期には噂を信じる人が大半となり告白されることもなくなった。

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田中は私が教室の外で話を聞いていたことなど知らない…だから今みたいな嘘の言葉を並べても私が気付かないとタカをくくっているのかもしれない。
接客で鍛えた愛想笑いでひたすら時が過ぎるのを待った…昔の記憶を思い出し苦い気持ちになりながらも、今目の前にいるのはお客様だと暗示をかけて仕事中なので申し訳ありません。と田中を退けた。

おおかた、田中は高校卒業後に美羽が藤咲家具の孫娘だと知ったのだろう…在学中は面倒なので隠していたし、名字も紺野だったので気付かなかったはず…それに私はいたって普通のサラリーマン家庭だったから…。地元を離れて隠す必要がなくなった。だから初詣のときの彼が奏くんで従兄で私が藤咲家具の孫だと…どこからか漏れ聞いたのだと思う。


高校卒業後、しばらくは勉強に励んで恋愛は後回しにしようと思っていたのに、彼と出会った。
でも彼は姿を消してしまい、恋愛には懲りたつもりだ。
それでも将来的に子供はほしいので30歳になる前にお見合いでもしようかなと思っている。祖父に頼めばきっと喜んで相手を探してくれるだろう…だって今ですらお見合いさせようとするぐらいだもの。私よりも奏くんが先だろうに…
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