私の世界で一番美しい疫病神
***


「重い……」


いっぱい買ってしまった。

カレーのルーに、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、豚肉、お米、エトセトラ。


カレーだけじゃ寂しいと、スープの具も買ったのが間違いだった。


「でも、カレーだけじゃ味っけないもんね……」


だって、一応。

……今日は入学式だったんだから。



「ワン!ワンワン!」


犬の声。


「にゃ。シャーッ!シャーッ!」


と、ねこ?


ふと道の脇を見る。



「ワンワン!ワン!」

「シャーッ!」



首輪の付いた犬と、砂まみれの猫。


喧嘩というわけではない。


犬は遊ぼう、と誘っているようだが、猫は怯えているみたいだった。



「えい!」



買ったばかりの、コンソメスープの元………サイコロ状のコンソメを、ふいっと投げる。

犬はそれに一目散に飛び付いた。


猫は……



「あれ?」



いない。


道には、コンソメに尻尾を振る犬と、スーパーの袋を片手に首を傾げる私だけがいた。



「……逃げたの」



かな?



「やあ!」

「ぐゃあ!!!」



うわ、変な声出た。



「驚かせてしまったね。ああ、大丈夫かい?」

「え、あ、は……」

「しかし、まったく美しくない声だったね……」



……それはすみませんね、美しくなくて。



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