森の奥のとある魔導師達の話。
その後は二人とも一言も発っさずにいた。
そのまま時間はゆったりと進み、空をオレンジや赤などの暖色が斑に混ざりあっていた。
「帰ろ」
私がそう呟けば、ルークは本をパタンと閉じて立ち上がる。
私は一歩先を歩くルークの、夕焼けによって伸びた黒い影を足の先で踏みながら歩いた。
*
帰っていつも通り夕飯を食べて(不思議と味がしなかった)
明日の準備の為に、大きなリュックに荷物を入れて、そのままベッドに寝転んだ。
瞼を閉じても意識はかなり近くにあって寝れなかった。
中心地ってどんなとこだっけ、と思いを張り巡らせば、気づかぬうちに眠っていた。
*
朝は起こされなくとも目が覚めた。
早朝に出掛けなくてはいけないため、起きたときには時計の針は4:30を示していた。
欠伸すら出なかった。
紺色のローブを手に取り、まじまじと見つめる。
私の髪と同じ色をした、紺色のローブ。
私はそっとローブに口付けし、白いシャツと黒布のパンツの上に被った。
リュックを背負い、階段を降りる。
リビングには、もう全員が座っていた。
早起きが苦手な筈のカミーユとカロルまで。
それだけで心が弾んだが、同時に心が針に刺されるような感覚もあった。
キュ、と胸の部分の布を無意識に握る。
カロルとカミーユが澄んだ青い瞳を此方に向けた。
「フィオナ、座って」
「朝ご飯だよ」
うん、と私は頷き、リュックを床に下ろしてから席に座った。
向かいのルークは、いつも通り、すました顔をしている。
エリーザが朝食の乗ったお皿を人数分、ふわふわと浮かせて歩いて来た。
コトン、と流れるように、目の前に浮いていたお皿がテーブルに乗る。
この毎日見た光景が、もしかしたら、もう見れないかもしれないのに。
クラークは、目を伏せながら、大切に、言葉をまるで宝石を扱うかのように紡いだ。
「いただきます」
次に、その場に居たクラークを除く全員分のいただきますの、重なる音が耳に心地よかった。
黙々と食べ進め、何時もよりも随分と早く食べ終わった。
昨日と同じく、味はしなかった。
エリーザが味付けを忘れた訳じゃないのは、知っていた。
食べ終わったお皿が並んで、聞こえるのは毎日変わらず鳴き続けている鳥の声のみ。
もうひとつ聞こえてきたのは、ルークが立ち上がるときに引いた、
椅子と床が擦れる音だった。全員の目がルークに注がれる。
ルークは私の目を見ていた。
「行くぞ」
「うん」
私は意識しないうちにそう言っていた。
立ち上がれば椅子の擦れる音がした。
ルークは、私達のリュックを開けて、中に手のひらをかざした。
「拡大魔法、ルエナ」
リュックの中に、一瞬だけ緑色の光が満ちた。
ルエナと言う呪文は、無限の呪文をかけられる。
リュックの中にかければ、そのリュックには無限に物を入れることが出来るようになる。
私達はルエナのかかったリュックを背負い、玄関へと歩を進めた。
玄関の扉を開ければ、花の香りが鼻一杯にひろがった。
これもまた、最後かもしれない。
エリーザが、微笑みながら一つのバスケットを差し出した。
「これ、お昼に食べて」
私はお礼を言って受け取った。
「僕達も手伝ったんだ!」
「特製サンドイッチ!」
カミーユとカロルが無邪気に笑う。
私がそんな二人の頭を撫でていれば、ルークは皆の方に顔だけ向けて言った。
「行ってくる」
私は精一杯、笑顔で言った。
「行ってきます!」
皆は、優しく笑った。
「行ってらっしゃい」
四人分の声が重なって、その声に後押しされる様に、私達は一歩を踏み出した。
そのまま時間はゆったりと進み、空をオレンジや赤などの暖色が斑に混ざりあっていた。
「帰ろ」
私がそう呟けば、ルークは本をパタンと閉じて立ち上がる。
私は一歩先を歩くルークの、夕焼けによって伸びた黒い影を足の先で踏みながら歩いた。
*
帰っていつも通り夕飯を食べて(不思議と味がしなかった)
明日の準備の為に、大きなリュックに荷物を入れて、そのままベッドに寝転んだ。
瞼を閉じても意識はかなり近くにあって寝れなかった。
中心地ってどんなとこだっけ、と思いを張り巡らせば、気づかぬうちに眠っていた。
*
朝は起こされなくとも目が覚めた。
早朝に出掛けなくてはいけないため、起きたときには時計の針は4:30を示していた。
欠伸すら出なかった。
紺色のローブを手に取り、まじまじと見つめる。
私の髪と同じ色をした、紺色のローブ。
私はそっとローブに口付けし、白いシャツと黒布のパンツの上に被った。
リュックを背負い、階段を降りる。
リビングには、もう全員が座っていた。
早起きが苦手な筈のカミーユとカロルまで。
それだけで心が弾んだが、同時に心が針に刺されるような感覚もあった。
キュ、と胸の部分の布を無意識に握る。
カロルとカミーユが澄んだ青い瞳を此方に向けた。
「フィオナ、座って」
「朝ご飯だよ」
うん、と私は頷き、リュックを床に下ろしてから席に座った。
向かいのルークは、いつも通り、すました顔をしている。
エリーザが朝食の乗ったお皿を人数分、ふわふわと浮かせて歩いて来た。
コトン、と流れるように、目の前に浮いていたお皿がテーブルに乗る。
この毎日見た光景が、もしかしたら、もう見れないかもしれないのに。
クラークは、目を伏せながら、大切に、言葉をまるで宝石を扱うかのように紡いだ。
「いただきます」
次に、その場に居たクラークを除く全員分のいただきますの、重なる音が耳に心地よかった。
黙々と食べ進め、何時もよりも随分と早く食べ終わった。
昨日と同じく、味はしなかった。
エリーザが味付けを忘れた訳じゃないのは、知っていた。
食べ終わったお皿が並んで、聞こえるのは毎日変わらず鳴き続けている鳥の声のみ。
もうひとつ聞こえてきたのは、ルークが立ち上がるときに引いた、
椅子と床が擦れる音だった。全員の目がルークに注がれる。
ルークは私の目を見ていた。
「行くぞ」
「うん」
私は意識しないうちにそう言っていた。
立ち上がれば椅子の擦れる音がした。
ルークは、私達のリュックを開けて、中に手のひらをかざした。
「拡大魔法、ルエナ」
リュックの中に、一瞬だけ緑色の光が満ちた。
ルエナと言う呪文は、無限の呪文をかけられる。
リュックの中にかければ、そのリュックには無限に物を入れることが出来るようになる。
私達はルエナのかかったリュックを背負い、玄関へと歩を進めた。
玄関の扉を開ければ、花の香りが鼻一杯にひろがった。
これもまた、最後かもしれない。
エリーザが、微笑みながら一つのバスケットを差し出した。
「これ、お昼に食べて」
私はお礼を言って受け取った。
「僕達も手伝ったんだ!」
「特製サンドイッチ!」
カミーユとカロルが無邪気に笑う。
私がそんな二人の頭を撫でていれば、ルークは皆の方に顔だけ向けて言った。
「行ってくる」
私は精一杯、笑顔で言った。
「行ってきます!」
皆は、優しく笑った。
「行ってらっしゃい」
四人分の声が重なって、その声に後押しされる様に、私達は一歩を踏み出した。