天才怪盗が拾った少女
第1章






あれから今日でちょうど3年。


『怪盗乱魔』も『天才』と言われるようになった。



俺の予想通りだ。


だが、宝とかは盗んでねーんだ。


取って、なんらかの方法でそいつに返す。



そしたら、世間に『なにも盗まない脱出の天才』と言われるように。



……なんだよ、脱出の天才って。


いや、確かになにも盗んでねーけど、もうちょいカッコいい名前なかったのかよ。


『乱魔』って結構カッコいいだろ?


それに似合わなすぎっつーの。



なんて、今は文句言ってるときじゃねぇ。


絶賛仕事中。



ま、集中しなかったら……



『乱魔!集中しろよ!』



ほらな。


お仲間、空海様がお怒りだ。



「集中してるって。なんで今日はそんなイラついてんだよ」


『なんか変なんだよ』


「変ってなにが?」


『警察相手なのに脱出がしにくくなってる。下手すればあっという間に捕まるぞ』



なるほど。


強力な助っ人でも手に入れたか?


ま、どんなことがあっても脱出して見せる。


『天才』だからな。



『とりあえず作戦通りに行け。あとはお前が得意な臨機応変で』


「ふっ……」



作戦はちゃんとある。


だけど、今回はそれが通用しないかもしれない。



だから、俺が思ったままに行動しても怒られることはない。


そう思うと、自然と笑みがこぼれた。



『極力作戦通りでやれよ』



空海はエスパーか?


なんで俺が思ったと同時にそんなことが言えんだよ。



「ちぇっ。了解」



俺はわかりやすく舌打ちし、気持ちを切り替える。


さあ、ショータイムの始まりだ!



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