樫の木の恋(上)


翌日登城し、織田家の主要な面々を紹介されていた。
筆頭家老の柴田勝家殿。丹羽長秀殿、池田恒興殿などの高名な家老の方々。木下殿と仲の良い前田利家殿、佐々成政殿や滝川一益殿など一度は聞いたことのある面々がいた。
どの方々も個性が強く、威圧感の凄い方々ばかり。
これでは斉藤家の寿命の無さは目に見えていたなと感嘆していた。

「小者風情が竹中殿のような優秀な配下をねぇ。宝の持ち腐れとはこの事じゃの。」

廊下ですれ違う時佐々成政殿が木下殿を下に見ながらあからさまに悪意を持って憎まれ口を叩く。
昨夜の事を考えるとこのように決して皆が好いてる訳でもない状況で今まで大丈夫だったのだろうか。

しかし、それは杞憂に終わった。

「小者だったそれがしも侍大将になれたのでなぁ。佐々殿はつい最近まで小者だったそれがしと今は同じ侍大将なんて、出世が止まっておられるようで。それじゃあ半兵衛のような優秀な部下は持てませんでしょう。」

佐々殿は今にも刀を抜きそうな勢いで怒っていた。しかし周りの目もあるうえに、手練れの木下殿に対する勝ち目を考えてなのか少し刀の柄に手をかけただけで済んだ。

「フン!すぐに木下殿に愛想を尽かし、大殿の直臣になるでしょうよ。」

そう言って通り過ぎていった。
負け犬の遠吠えにしか聞こえない。
男として振る舞っている時の木下殿は、そこらの男よりも気が強く凛々しい。

「木下殿は格好いいのですね。」

「半兵衛はすぐからかうな。」

そう言って笑いあった。本当に男として振る舞っている時の木下殿は頼りがいがある。



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