樫の木の恋(上)



すると秀吉殿は昨夜それがしがしたように、首元に顔を沈め口付けをしてきた。
柔らかい秀吉殿の唇が当たる度、気持ちのいいそれは思わず息が荒くなる。

「半兵衛…気持ちいい…?」

「気持ちいいですけど、どうしたのです?どうしてそんないきなり…」

すると顔を離した秀吉殿の顔は困っているようで、そんな秀吉殿の頬に手を当てる。

「その……だな…。昨夜途中で終わらしてしまったじゃろ…?私はまだ怖くて出来んから…、でもそれでは半兵衛が辛いじゃろうから…せめて…してやることくらいは出来る…かなと思って…。」

要は昨夜途中で終わらせてしまった事を後ろめたく思い、せめてそれがしに気持ち良くなってもらおうとしていたわけだ。
わざとらしくため息をつき、秀吉殿を引き寄せ抱き締める。

「そんなことしないで大丈夫ですから…。それがしは秀吉殿が大丈夫になってからで構いませんから。」

「だがそれじゃと若い半兵衛には物足りなかろう…?」

「あははっそれがしは獣じゃないんですから。秀吉殿は変なところで気を使うんですから…。」

不安そうな顔をする秀吉殿に笑いかけ、ゆっくりと口付けをする。

「でも…嬉しかったですよ?一生懸命してくれようとする秀吉殿が可愛くて…。」

「…うるさい……。」

完全に先程と立場が変わり、今度は秀吉殿の顔が赤くなり恥ずかしいのか見せないように首元に顔を埋めている。
そんな秀吉殿のおでこに口をつけながらぎゅっと抱き締めて幸せを感じていた。


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