隣の犯罪者?!
「いいの、美咲」
「うん、残業だししかたないよ」
私は諦めて定時を過ぎてもパソコンにくらいついていた
やっと終わって顔をあげれば22時をまわっていた
誕生日、終わっちゃうな
会社から出ると見慣れたバイク
「どういうつもりだ?」
「ほっといてよ」
「シカトすんなよ」
「疲れてるから考えたくないの
心が読めるなら察してよそれぐらい」
「二時間だ」
「はい?」
「おまえを待ってた」
今度はストーカーに転身したの?
「待っててなんて言ってないでしょ」
皇夜は何も言わずバイクから降りた
ヘルメットを外すとバイクに寄りかかってタバコを吸う
「誕生日せっかく祝ってやろうと思ったのに」
背が高いから皇夜の流し目は見下し感満載なんだよね
「祝ってほしいなんて言ってない」
「拗ねてる?かわいくねぇんだよ」
皇夜はタバコを消すと私の手首を掴んでバイクの後ろに無理やり乗せてヘルメットをかぶった
「待って」
「掴まってねぇと振り落とすぞ」
皇夜のバイクテクはイヤというほど知っている
だからとばさないでよ
おかげで隣街までさほどかからなかった
バイクを停めた店はかなり大きい
中に入るとかなり薄暗く巨大なダンスホールでみんな踊っていた
「皇夜、部外者だろその娘
マスターにばれたらヤバいって」
皇夜は強引に二階の静かなBARのスツールに私を座らせた
「ちょっと待ってな」
皇夜どこ行くの?
皇夜は一階のダンスホールに行くと真ん中を開けて私を手招きする
「私、踊れない」
皇夜は私をアシストしながら一段高い場所にあがった
皇夜がさらりとシャツを脱いで私にキスをしてきた
「やべぇとまんねぇ」
「皇夜ねぇ皇夜」
皇夜じゃないみたいな手つき
皇夜?私どうなっちゃうの?
「···っ」
私は皇夜の指に噛みついた
「皇夜きこえる?」
「ああ悪い」
やっといつもの皇夜だ
あんな熱に浮かされた皇夜はじめてみた
「怖かった」
「悪かった」
皇夜はシャツを拾いあげ羽織ると私を二階にあげてくれた
「なにか呑みます?」
バーカウンターにいた人が言う
「あっいえ」
皇夜はトイレって言ってたし
私はあんまりお酒つよくないしどうしよう
「如月皇夜を待ってるんですか?
彼は時々ショーもやってくれるんですよああやって」
「それは私の知らない皇夜です」
「あなたといるときの彼は確かに繊細です
まるであなたを守ってるように
ああそうだこれをどうぞ」
それは小さなケーキだった
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