溺れる恋は藁をも掴む
 晶に惹かれて、どんどん好きになって、
心に歯止めが効かなくなっていった。

 太陽の事すらも忘れてしまいそうで、怖くなった。

 一層の事、全部忘れてしまって、晶との恋に走ってしまおうか?

 なんて、狡い気持ちにもなった。

 晶に全て話して、楽になることも考えた。

 晶が、『そんな事、気にしない』って言ってくれたら、私は間違いなく、全てを捨ててしまったかもしれない……


 だから言えなかった。

 今まで嘘をついていた事、本当にごめんなさい。



 太陽が腎不全になり、元夫が私の前に現れました。

 太陽を助けてやって欲しいって頼まれたわ。

 太陽の為にもう一度やり直すことと、私の腎臓を太陽にあげて欲しいと、頭を下げられました。

 散々、私が『助けて』言っても、助けてくれなかった男がよ?

 笑っちゃうよね。

 それでも、太陽にしてあげられる事があるなら、何でもあげたい。

 やっと太陽の役に立てる。
こんなに嬉しい事はないわ。

 私は太陽の元に帰ります。
もう一度、母親に戻ります。


 今まで有難う。
こんな私を受け入れてくれて……

 晶は私の最高の理解者だったよ。

 嘘もついたけど、晶との愛しい日々には嘘はなかった。

 大好きでした。

 結婚しょうと言われた時、本当に嬉しかった。

 でも、私は晶のシンデレラにはなれない。
もっと、晶に相応しい子が居るわ。

 さよならも言わずに去る私なんか、
とっとと忘れて!



 ガラスの靴は持っていくね。
それだけは許して欲しい。



 晶、幸せになって下さい。




 樋口 百合










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