これを『運命の恋』と呼ばないで!
元はと言えば…
(元はと言えば青空先輩のせいだ)


山の中に鎮座する神社の神殿の中で、私はそう思いながら首を項垂れた。


青空先輩と言うのは勤めている会社の同じ課で働く私の教育係……と言うか指導者で、年齢は確か3つ年上の27歳だったはず。

フルネームを『青空 奏汰(あおぞら かなた)』と言い、口喧しくて厳しくて、私のことを『バカ山』と呼ぶ嫌な男。


『バカ山』呼ばわりされている私の名前は『若山 夏生(わかやま なつみ)』

会社に入って丸2年が経過したばかりの24歳で、昨年度の春から総務課の事務をさせられている。


大学卒業後、初年度は営業事務員として採用された。
営業二課へ配属され、迷いながらも懸命に仕事をこなしていた。

二課の仕事は営業一課の人達が結んできた契約を書類化し、収益や支出を導き出すのが役目。

そこで自分なりに頑張って仕事をしていたつもりだったのに、一昨年度末、いきなり営業部長から呼び出しを受け……



『若山さんは4月から総務課で働いて』


『は?…総務?』


ピンとこなくて戸惑った。


総務課というのが会社内にあるのは知っていた。
給与計算やら会社全体の損益計算なんかをする部署だと、入社当初のオリエンテーションで学んだから。

でも、どうして自分がそこに異動になるのが分からない。だから、当然理由を聞いた。


『どうして私が異動させられるんですか?』


首を傾げながら尋ねると、営業部長は重く溜息をついて答えた。


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