これを『運命の恋』と呼ばないで!
鬼みたいな人と
「こら、バカ山なつみ!」


「ほぇ……?」


返事にならない声を出した。
薄目を開けた視界に、怖い顔をした青空先輩が立っている……


「お前のお陰で残業中なのに、居眠りするとはいい度胸だな」


閉まっていた『への字』口が開いた。


(残業……?)


寝不足のせいで、どうにも思考が働かない。
ぼぅっとしたまま視線を走らせると、オフィスだということに気がついた。



(ヤバい!そう言えばそうだった……!)


勢いよく伏せていた体を起こす。
クレハさんの所へ行った後、2.3日の平和が過ぎ去ると同時に大変なことが迫っているのを知った。



『あと一週間で監査だというのに、お前の仕事の遅れぶりは何だ!』


この2.3日大目に見ていた先輩が、私に任せていた残務整理が殆ど進んでいないことに気づいて怒鳴ったのは今日の午後。


『お前には只でさえ他の社員よりも量を減らしてやってるのに、それすらも間に合ってないというのはどういう意味だ!』


『す、すみません!』


頭の上から降ってくる矢のような言葉に肩を竦めた。

青空先輩は顔を引きつらせたまま、本当はもっと怒鳴りたいであろう声を呑み込んで指示をした。


『いいか、今日から監査が来るまでの一週間、毎日残業してでも間に合わせろ!分かったな!』


『は、はいぃぃ!』


鋭い視線に逆らうこともできず、その瞬間から残務整理を始めたのはいいけれど、最近悩んでいる死期のことで寝不足が続いていた為、残業中にも関わらずデスクにうつ伏せて眠り込んでしまった。
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