これを『運命の恋』と呼ばないで!
救世主の彼女
「ナツぅ、強い味方っぽい人は見つかった〜?」


水を飲みながら話す智花の声に返す返事は暗い。


「ううん、まだ」


まさか「鬼だ鬼だ」と言ってた人をそれと勘違いしてプロポーズしたなんて話せる訳もなく、「一体何処に居るんだろうね…」と呟いた。


「こうなったら婚活するしからいよ!」


舌ったらずな物言いで叫ぶ智花の声にぎょっとする。


「婚活?」


酔っ払ってる智花は「そう!」と声を張り上げ、「一緒に合コンへ行こう!」と誘った。


「合コンねぇ」


出会いの場としては最高なのかもしれないけれど、どうにも私向きではない場所だ。


「結婚相手になりそうな男の1人くらいいるかもよ〜!残念ながら今日はいなかったけど〜」


私が鬼先輩と残業してる間、智花は自身のお店が入ってるビルの仲間達と一緒に飲んでたらしい。


「1階のレストランのオーナーさん来るって言うから期待してたのに、顔見たらまるで幻滅。狸オヤジみたいなんだもん…」


ヘアメイクの勉強をしにアメリカへ行っていた経験がある智花にとって、日本人の男性は誰も理想通りではないらしい。


「何処かにいないかなぁ。私とナツの結婚相手〜」


「ふふ。本当ねー」


酔っ払いながら話す智花の相手をしてケータイを切ったのは0時過ぎ。
昨夜は激しく落ち込んで泣きながらだけどよく眠れた。


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