よるのむこうに
4、類は友を呼ぶはずなのに

けたたましい目覚ましの音で目を開けると、天馬が「るせぇ……」と唸って目覚ましを止めた。
私がセットした目覚ましだが、彼は私が起きようが起きまいが勝手に目覚ましを止めてしまう。これもいつものことである。
私は小さく呻いて体を伸ばし、ベッドから立ち上がろうとした。

あれ。

床が柔らかい。
何か踏んだのだろうか。私はフローリングの床を見つめた。そして次に自分の足の裏を見つめた。けれど、何もない。いつも通りの床だ。
気のせいだろうか。

「おい、遅刻すんじゃねーのか。牛乳もう無ぇぞ、買って来るか?」

顔を上げると天馬が朝の光を背中に浴びて寝室のドアにもたれていた。昨夜私がベッドから蹴落としたのでソファで寝たようだ。

「あー……いいや。じゃあコーヒーだけで……」

天馬はそれを聞いて眉間に皺を寄せた。
どういうわけか彼は食事を抜くことが嫌いだ。自分自身が食事を抜くのを嫌うだけでなく、私が食事をしないのも嫌がる。
いっしょに食事を取りたいなどというかわいい動機からそうしているのではなく、食事さえとっていればべつに電車で食べてもデスクで食べても何も言わないが、食事そのものを抜くのだけは駄目らしい。
これはあまり物事にこだわらない彼の、数少ないこだわりのうちの一つだ。

「……コンビニいってくる。何か欲しいものあるか」
「朝から気が利くね」
「……」

褒めたつもりだったのだが、天馬は仏頂面のまま私に背を向けて買い物に出ていった。フットワークが軽いのと重い荷物が苦にならないのは素晴らしい長所だ。

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