スケッチブック




 透明なテープであちこち直してあるものの、破れてばらばらになってたりしたんだろうなとすぐにわかる。表紙をゆっくりめくる。いつも使っていたから、どの絵が無くなったとかすぐわかる。ページ数も少なくなってしまっているが、どうして。
 ところどころ、透明なテープで直してある。ちょっとしわがよっていたりするのは、なんだか必死さが伝わる。
 そして。



 ―――お前の絵、すげえからこれからも描けよ。


 嘘でしょ。
 これ、直したのって。



 そう思うと私は慌てて部室を出る。廊下に人の姿があるが、彼じゃない。何処に行った?まだ、まだお礼言ってない。

 三年生らが美術部の部室に入って荒らしているのを片石は止めて、殴りあいとなった。それで、何故私のこのスケッチブックを彼が持っていたのかといったら謎だし、それからわざわざ直してくれたのも何故なのかさっぱりだが、とにかく彼は私の破れたスケッチブックを直して、持ってきてくれたのである。

 どうしてかは、知らない。
 この文字だって、そう。



「っ片石君」



 階段の下、踊場にいた。両手をポケットに突っ込んでだるそうに歩く横顔が、こちらを見た。



「これ!―――ありがと」



 あちこちテープで直してあるスケッチブックはもう使えないだろうが、それでも嬉しかった。戻ってきたことや、わざわざ直してくれたことが。
  


「おう」



 少し照れたような顔でそう言ったきり、片石は階段を降りていってしまったが、私はしばらくそこに居た。

 おう、と言ったときの片石の、不良というより少年じみた顔をしばらく忘れられないだろうな、と思いながら。




  《スケッチブック》 了

 



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