先生。あなたはバカですか?
「……今までしてたよ。お母さんが帰って来たのが分かったから、お帰りとだけ言おうと思って…」
私のその言葉にお母さんは、大きな溜息を一つつく。
「そんなくだらない事で、勉強の手を止めるのはよしなさい。出迎えも、お茶もいらないわ。あなたは勉強だけしていればいいの」
何度言わせれば気が済むの?と言わんばかりに、お母さんは気怠そうに首を鳴らし話を続ける。
「人の事なんかにかまけていないで、もっと死ぬ気で勉強したらどう?あなたのお父さんみたいになりたくなかったらね」
「……はい」
「分かったら、さっさと部屋に戻りなさい」
「おやすみなさい…」
私は、お母さんの為に用意したグラスを静かにその場に置くと、リビングを後にした。
––––うちの両親は、私が中学に入ると同時に離婚をした。
私がもう直ぐ13歳になろうという時だ。
昔から小さな喧嘩はよくする二人ではあったけれど、夫婦というのはそんなものなのだと思っていた。
二人は夫婦二人三脚で自営業を営んでいたし、真剣に取り組んでいるからこそぶつかり合うのだと、二人は私によくそう話してくれていたから…。