先生。あなたはバカですか?
教室を出て行こうとする私の腕を掴む花織ちゃんの姿は必死で。


だけど、私はそんな花織ちゃんに何も心が動かない。


何も考えられない。


まるで、自分がただの抜け殻になってしまったみたい。


心が溶けてなくなってしまったみたい。


「翠ちゃん!本当にいいの!?岩田先生に会いに行かなくて本当にいいの!?」


……いいも何も。


私が会いに行く理由なんてないじゃないか。


先生が勝手にいなくなったんだから––––。








––––クリスマスが終わり冬休みの間、先生は連絡一つよこさなかった。


まぁ、夏休みもそうだったし、長期休みは何かと忙しいのだろうと、私もさほど気にしてはいなかった。


私の受験勉強もいよいよ追い込みに入ってきていて、先生の事ばかり気にしていられなかった…というのも本音だろう。


だけど、冬休みが明け始業式の日。


校内に入れば、自然と先生を探してしまう自分がいて。


そんな自分にほとほと呆れながら、教室までの廊下を歩いていると。


『生田!』


血相を変えた様子の峰山先生に腕を掴まれた。
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