先生。あなたはバカですか?
「俺が勝手に、生田さんを好きでいただけなんだから」


泣くのなんておこがましい。


そう、頭では分かっているのに……。


溜まった涙は零れ、川島君の手の甲を伝う。


「生田さんが幸せなら、俺はそれで幸せ」


そう言って目を細める川島君。


「だから、幸せにならなきゃダメだよ」


川島君の唇がゆっくりと下りてきて、私の額にそっと触れる。


そしてまた、ゆっくりと離れていった。



離れていく、川島の体温。


彼は目を細め、優しく笑う。



それから、私の頭をポンポンと2回叩くと、私の横を通り過ぎ、何も言わず屋上を出ていってしまった。


「川島君……っ…」


きっともう、二度と私に触れる事のない優しい優しい手。


私を沢山救ってくれた、優しい手。



凄く、凄く寂しい。


だけど…–––––。




「ありがとう。川島君……」




だけど、私は彼の手を離れ、一人歩き出す。



間違いなく私は、世界一の愚か者だ。










***


自分で言うのもなんだけど、私は本当にバカだと思うんだ。


普通、好きな人が結婚してしまうと分かっていながら、その人を好きでい続ける決断をするとか……。
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