ソファーに並んで
要の質問に善一朗は説明がしにくそうに答える
「ジイさんに教えてもらった技術なんだけど…なんだろ…イメトレ?…試し斬り?ちょっと違うなぁ…威圧に近いかなぁ~……うん!体感してもらうのが一番かなっ!要には仕掛けた事ないし…」
そう言うと笑顔で要を見つめる…とたんに要は金縛りにあったかの様に体が動かなくなった
「わかった?そんな感じ」
解った…解らされた、という表現が正しいのか
「ハハ…すっげ…これは“弁慶”って呼ばれて当然だ…ハハハ…」
笑っているが要の声が震えている…
「ごめんね?大丈夫?……律もごめんっ!そんなに怒らないでよ…百聞は~…ってよく云うじゃないか!ね?」
善一朗は要に謝るが、チラリと一瞬だけ目を移した律に何故か動揺しながら謝る…律は最初からずっと笑顔のままだが
「あれ?僕は怒ってなんかないよ?でも善…もう一度“それ”を要へやったら怒るよ」
意味深な事を言う律…どこか迫力がある…
「律…お前は恐いよ…でもやっぱり優しいな」
善一朗はフーっと息を吐く
「まぁ体感してもらえると説明は簡単なんだ“僕は君より強い”って争いになる前に教えてあげる技術だよ、例えば目の前にライオンがいて闘いたい!って思う人間は少ないはずでしょ?因みに今、律が僕へ向けたのは本能的な殺気だよ…恐い恐い……それに僕は悪そうな人や危険そうな人…この人は強いっ!って時しか使わない…要みたいな生粋の良いヤツに仕掛ける意味ないし」
だが、食い違っている点を要は聞いた
「じゃあ何で律にやるんだ?しかも毎日」
やれやれと善一朗の再説明
「今、言ったじゃないか?この人は強いっ!って時に使うんだよ…強い人からは学ぶ事が山ほどあるからね…僕が“弁慶”なら律は“義経”か“牛若丸”だよ…実際に手合わせしたなら分からないけど僕の技術が全然通じないんだ…律は僕より遥かに強いよ」
最後の一言に要の目が点になる…その顔で千尋の方を向く、そして千尋はプッと笑ってしまった
「え?…ええー!なんだそりゃー!!」
学校中に響き渡るくらいに要は叫ぶ
チャイムが鳴り、先生が言う
「はいはーい!元気な事は良い事だけど、ちょっとうるさいよー!出席取るから全員、席座ってー」
自分の席へ着く前にすれ違う瞬間、善一朗は千尋にだけ聞こえる様に言った
「何があったかは知らないけど…よかったね」
ニコリと笑う

……要の叫びが聴こえたわけではないが違う教室で明音も何故かクスッと笑っていた
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