初恋、はじめました。




「…ふはっ」



恥ずかしいながらも深く深く感謝の思いを込めて頭を下げた円香に降ってきた思わぬ笑い声。


笑うところなどあったかと不思議に思って顔を上げれば、先程の作ったような笑みとは違い楽しそうに笑う彼の姿。


手を口に当てながらも隠しきれていない上がった口許。細められた瞳。その奥に先程の寂しげな色はない。



「別にっ本当、大したことじゃないっしょ!あんたおもしろいなー」



肩を震わせケラケラと笑う彼をキョトンとしながら見つめる円香。

そんな円香の表情に彼は更に大きく笑い出す。

何故彼がそんなに笑っているのか、何がそんなに面白かったのかはわからない。

しかし、彼の笑ったその顔にドキンッと鳴った円香の胸。


先程とは違う寂しさを含まない純粋な笑み。

顔をくしゃりと楽しそうに歪ませたそれはとても綺麗で。




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