背伸びして、キス


一条洋介さん。
口が悪くて背が高くて、素っ気ない。

私が知ってる彼のすべて。



それなのに。
どうしてこんなにも気になるんだろう。



――それは恋ね




涼子ちゃんの言葉が蘇る。
違う違う、ないない。

だってあんなに失礼な人。



私が好きになるのは、たとえ年上でももっと大人で穏やかな人に違いない。




ハンカチをゴソゴソと取り出してベッドに寝そべりながらそれを見上げた。
小さなロゴの入ったシンプルなハンカチ。

そっと口元に持っていくと、スン、と匂う。
私の家の洗剤の匂いだ。


・・・って、なに変態みたいなことしてるんだろう。

慌てて袋の中にしまい机の上に置いた。




危ない危ない。
違うから、本当に違うんだから。




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