背伸びして、キス


申し訳なくて、でも嬉しくて。
洋介さんの好意をありがたく受けることにした。

ちゃんとなにかでこのお礼はしよう。



「私、こういう所初めて」

「よかった。個室だし、マナーとか気にしなくていい。フォークが使いにくいなら箸を頼んだっていいぞ」

「でも、」



みっともないところ見せたくない。
洋介さんのお友達がいるのに、洋介さんの彼女がマナーも知らないなんてって・・・。
知らないから、仕方ないけど。

洋介さんの株を下げる事だけは・・・。


「変なこと考えてるだろ?」

「え」

「マナーなんて、初めてじゃわからなくて当然だし。こういうところに来るって言ってなかった俺が悪い。お前に、変に緊張させたくなかったから黙ってたんだ。本当に、大丈夫だから、気楽にしろ」

「・・・うん」



洋介さんは優しい。
いつだって、何度だってそう確信する。



運ばれてきた料理を、私が緊張せずに美味しく食べれたのは、きっと洋介さんのおかげだ。
料理はどれもほっぺが蕩けそうになるくらい美味しくて。

何度も、美味しいって言いながら頬張った。
言葉のレパートリーが少なすぎて、後悔した。



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