背伸びして、キス


会わなかった年月は、俺の知らない広美の面影を確かに映してて。
校庭を走り回ってたあの頃とは、俺も広美も変わってしまったのだと思い知る。



「お待たせしました」



そこで店員が料理を運んできて、話が中断された。
運んできたのは、一華ではなく外から見えていた男の店員。


なにかを含んだような視線を投げられたが、その店員はすぐに踵を返していってしまった。
ちらっと店内を見ると、別の席に料理を運ぶ一華の姿があった。


俺は、いったい何をしてるんだろう。





「あのね、私・・・」




そんな俺に躊躇いがちに広美が話を切り出す。






「実は私、離婚したんだ・・・。今はシングルマザーで子ども育ててるの」





悲しげにそう言った広美の声が、胸の奥に響いた。





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