背伸びして、キス


「ずっと、好きで、気持ちも伝えられないまま未消化に終わった恋だから。あいつ自身も、自分の気持ちとかにはっきり言い切れなかったんだと思う」

「・・・はい」

「でも、確かに言えるのは、あいつが一華ちゃんの事を好きだって言ってたことは、絶対に真実だってこと。一華ちゃんと家に食べに来た時のあいつは、本当に幸せそうだった」

「・・・っ」

「あいつ今、全部自分のせいにして、一華ちゃんの事諦めるつもりだ。俺は、そんな事させたくない」




ギュッと槙原さんが拳を握る。




「一華ちゃんが、もうあいつに気持ちがないっていうなら何も言えない。でも、そうじゃないなら・・・。俺は、一華ちゃんに一条の側にいてほしい」

「槙原さん・・・」

「あいつには笑っててほしいんだ。俺の勝手だけど。本当なら、大人で男の一条の背中を押すべきなんだけど、あいつ頑なだからさ・・・」




そう言って切なそうに笑った。
槙原さんの想い。

聞かされた真実。



私がどうするべきなのか・・・。



私が、どうしたいのか。





もう、間違えないように。
もう、迷わないように。



< 310 / 351 >

この作品をシェア

pagetop