百の魂に幾千の想いを
「っ?…痛」

突き飛ばされたように、私は地面に尻餅をついた。

「…森…」

見上げれば、日光の洗礼。
自分を囲むのは森の木々たち。

「…帰ってきたんだ…」

傍らにあるバックから携帯を取り出して時刻を見る。

「嘘…あまり時間経ってない…」

私はしばらくぼんやりと空を見上げた。

「夢、だったのかな…?」

携帯を上着のポケットに直そうと手を突っ込む。

「あ…」

ポケットの中に布が入って居た。その布は微かに湿っており、ふわっと桜花の香りがする。布をひっくり返すと、何かが弾みで下に落下した。

「…指輪…」

シルバーの細身の指輪。
内には私と孝雄の名が刻まれている。

「…行こう」

指輪をはめた私は再びポケットに布を直し、立ち上がった。ぽんっとスカートに付いた土を払う。

ざざざ…と葉が揺れる。私は目を細めた。

「…いつも傍に」

そう、君は私の傍に居る。
これからもずっと…
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