わたくし、愛しの王太子様に嫁ぎますっ!

「リリ、さよならの時間だ」


宿場街で聞いたのと同じ言葉だけれど、あのときとは意味がまったく違う。

先の約束があるもので、リリアンヌはにこりと微笑んだ。


「はい。あの、これを受け取ってください。誕生日のプレゼントです。昨日渡しそびれてしまって・・・」


少し寂し気に微笑むレイに、リリアンヌは細長い箱を手渡した。


「何が入っている?」

「羽ペンです。もっとお手紙を書いてほしくて、選びました。使ってください」

「了解。愛の言葉をたくさん書くとしよう。リリが早くこちらに来たくなるように」


レイは額にキスをおとしてリリアンヌを抱き上げ、馬車に乗せた。

出発の合図がなされゆるゆると一行は進む。

リリアンヌは、レイの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。


< 121 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop