夫の教えるA~Z
「……」
ちょっぴりショックを受けた夫は、払われた自分の手をじっと見つめた。

だがこの男、それくらいで凹むような精神構造はしていない。
彼は再び、妻に挑む。

「トーコ」
今度は、もう少し強く抱き締めた。抱き締めながら髪をかきあげ、首筋に2つ、キスを落とす。

「だーーー、こそばいっ。
今名案が浮かんだとこなんですから。
あなた先に寝ていて……オヤ?」

ふわり。
突然、妻が今まで相対していた書類が、彼女の目から遠のいた。

と同時に、足が地につかず、宙に浮いていることを知る。

「え?え?えええっ、何これ」

慌てて足をバタつかせた彼女は、すぐに、夫に抱え上げられていることに気がついた。

「ちょっと何を…どこ行くんですか秋人さんっ、私はいま、大切な用事をネ?…」

フフフンフ~ン。
機嫌よく鼻歌を歌いながら、彼女を運んでいた彼は、喚く彼女にニッコリ笑いかけた。

「ベッド」
「うごっ!?ちょっと待って、私の話聞いてます?」

「ああ勿論。でもなトーコ、我々にはもっとも大切な事がある。それは_____」

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