夫の教えるA~Z
…多分、アイツだ。

俺は、他のスタッフ達とニコニコしながら話している、ブリーチ強めのパーマヘアの男に目をつけた。

背が高くてキツい美人顔、繁華街を歩けば高確率でニューハーフと間違われるねーちゃんは、自分とは正反対の、女っぽい天然系の男が好きなのだ。

そしていつも他に女がいたり、貯金を盗まれたり。

概して口の上手いそのタイプの男と付き合っては騙され、最後には泣かされる羽目になる___


「なあ、トーコ」
俺は、半分のところで手を止め、お喋りに夢中になっている彼女の肩をトンとたたいた。

「え、あ、はい?」
「俺のほう、追加で栄養指導も入れてくれる?
ほら、こないだ健康診断で言われたんだ。飲みが多いから気を付けろってさ」

「ああ、いいですよ。夏子さん、今日、春日(カスガ)さんの時間、空いてます?」
「え、あ、ああ。聞いてくる」

…アイツ、春日ってのか。
ビンゴだ。
少し上ずった声で答えた姉ちゃんは、さっきの男のデスクに走り寄っていった。

頬を上気させながら、嬉しそうに男にはなしかける姉貴の顔は、紛れもない女の顔だ_____

やがて姉貴が戻ってくると、トーコはニコニコしながら“栄養指導”の欄にマルをし、予定時刻を書き込んだ。

「よかったですねえ、アキトさん。
春日さん大人気ですから。土日はなかなか取れないんですよー」

「…ああ、ホントに」
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