夫の教えるA~Z
Y 松田、付き合ってるってよ

季節は3月。
そろそろ桜の舞う季節だ。

その日の夕方、長時間の協議で疲れた俺は、ちょっと休憩しようと会社の外に出た。残業のない一般社員がぞろぞろと会社の門を出てゆくなか、にこやかに挨拶を交わしながら、のんびりと同じ方向に向かっていた時だった。

「お、松田」

通勤用には少し大きいリュックを背負って、そそくさと追い越そうとした見覚えある顔に、俺はにこやかに声をかけた。

「お疲れ、今日は早いじゃないか」
「あ、え!えっと、あの、すいませんっ」

「いや、謝るとこじゃないだろ。俺は別に早く帰るのを咎めてるわけじゃないぞ。寧ろ管理職としてノー残業を進めているくらいで…」

おかしいな。いつもなら、ピョコピョコ尻尾を振りながらやってくるのに、今日はやけにソワソワと、俺に呼び止められたことに困惑しているかのように見える。

何となく不審に思い、松田(こいつ)の視線の先を見、俺は驚愕した。

何とそこには、やたら見慣れたハーレーが停車されている。

そして…

観念したように、車体の影からやたら見慣れた顔がヒョッコリ顔を出した。

「な、夏子?!」

エ、ナンデナノ( ・◇・)?
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