夫の教えるA~Z
シーーン。

あれ?返事がないや。
でも、やっぱり物音が……

「………!」

ん?
 
奥から何やら声が聞こえる。
トシキは手をあてて耳を澄ました。


「……てぇ……突いてぇ!」
「む、無理だ……これ以上は…」

「お願い……もっと奥まで…」
「これ以上は……壊れてしまう…」

「イイのっ…そう、もっと…もっとぉ!」



…………。

エエエエエエッ‼
昼間っからナニやってんのぉぉ‼

トシキは、慌てて玄関ドアを閉じ、クルリと180度体を回転させると、足早にその場から逃げ出した。

ハアハアと肩で息をしながら、エレベーターのボタンをポチっと押す。


噂には聞いていたが、支社長やっぱスッゲエや。
奥さん、小さくて可愛らしい感じの女の子だったけど。見掛けによらないモノなんだなぁ。

女の子って……
みんなあんな感じなのかなぁ…

松田俊紀23歳、女性経験ナシ(常時彼女募集中!)。

エントランスまで降りた彼は、ブルリと身体を一震わせすると、来た道をトボトボと歩き始めた。

大人の世界への呑み込み難い嫌悪感と、ホンの少しの羨望を感じながら……



あ、『あの話』どうしよう。

……いいや、また明日にしよう。

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