青春グラフィティー*先生と生徒の関係。
昔話を少々。



少し昔話をしようと思う。

別にそんなに昔の話じゃないよ?

あたしが入学して数日が経った頃の話だから、一年とちょっと前になる。



その日、あたしは一目惚れをした。


電車に中々乗ったことのないあたしは、高校を電車で通う所にしたことに、すぐに後悔することとなる。
慣れない通勤ラッシュで身体を潰されて、思うように息が出来なくて、吐きそうになっていた。
電車の中で気持ち悪くなって、人がぎゅうぎゅうにいる中、立っていられなくなって、気持ち悪さから涙が出てきたあたしを周りの人は迷惑そうに見ていたけど、先生だけは違った。


あたしのすぐ側にいたらしい先生は、あたしの背中をさすりながら優しく声をかけてくれた。

あたしの制服を見た先生は、『俺と同じ高校のようですね。俺が高校まで連れて行くので、安心してくださいね』って言って、柔らかく微笑んだんだ。




その表情を見た瞬間、あたしは恋に落ちた。




優しくされたから、先生の見た目が良かったから。
そう思われるかもしれないけど、違うんだ。




あの時の先生はーーー。







ハッと目を開ければ、電車のドアガラスに反射して映る自分の姿。
首には痛々しく見える包帯が巻かれている。
憂鬱になるあたしの気持ちとは関係なく、電車のアナウンスは高校の最寄りを告げる。


仕方なしに電車を降りて、学校に行き下駄箱で上履きに履き替えて廊下を歩いてれば、向かいから、



「……十河先生」



が歩いてきた。

なんでこんな所に先生がいるの!?
いつもは保健室に籠ってる時間なのに!
どこか隠れる場所は!?
キョロキョロと見回したけど、隠れられるような場所が廊下にあるなんてわけはなく、




「…よし。こういうのは逃げるが勝ちって言うよね!!」




歩いてきた道に方向転換して、全力疾走で駆け出す。


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