屋上カメラマン
 しかし、彼女がこの頼みを断ることはないだろうという確信が俺にはあった。この学校の隠れた伝統である屋上カメラマンは、人知を越えた不思議な力に守られ、継続されていく。

 俺は今日で屋上カメラマンを引退する。そんな日に彼女がここに現れたのは、ただの偶然ではないはずだ。

「自分の姿が写った写真はないんだよなぁ」

 俺が屋上カメラマンになった日、別れ際にドンがぼやいていた言葉だ。

 幸運なことに、俺は彼女のおかげでカメラを構える自分の姿を見ることができた。それだけでも十分俺は幸せなヤツだと思うが、それ以上に幸せだと思えることがある。

 何も言えずに固まっている彼女を見て思う。ずっとレンズ越しに片想いを続けていた相手が、俺のあとを継いで屋上カメラマンになってくれるなんて、これ以上幸せな事はないだろう。
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