ひとつの村が消えてしまった話をする
小屋を出た瞬間。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!」

葵の悲鳴が小屋から響いた。

「葵っ?」

「クソオオオオオオオオオオ!」

滋が小屋に戻ろうとするが、黒い何かが追ってくる。

「アアアアア…アアアアアアアアア」

呻き声を上げながら迫ってくる黒い何かに、滋は持っていた包丁を投げ、俺は摑んでいた塩の塊を投げた。

「アアアアアアアアアアアアアアアアアア」

黒い何かの動きが止まった隙に、俺と滋は逃げた。

獣道を無我夢中で走って、途中で何度も転んだ。

正直、この辺りの記憶は曖昧で、良く覚えていない…。




















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