私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

『じゃあな、秋奈』

 夏の声…。

 目の前が急に眩しくなる。逆光の先に1人の影。

 その影は、逆光の中に溶けて行って…。

 夏…?

「なんでここにいるの!!」

 急に耳に飛び込んできた声に我に返ると、焦ったようにお母さんが駆け寄ってくる。

 腕を掴まれるとすぐに歩き出そうとする。

「帰るわよ」

「ッ」

 抵抗しても強引に引きずられて歩かされる。

 もう、ほっといてよ!

 出てこない声にまたイライラする。

 もう嫌だ。なんで思い出しちゃダメなの?

 声が出なくなったくらいで、お母さんは何を怖がってるの?

 私は、そんなに弱いままなの?

 お母さんに引きずられるようにして去った商店街。

 瞬のことも忘れて私を家まで連れて行ったお母さんを無視して部屋にこもった。
< 147 / 341 >

この作品をシェア

pagetop