私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

 ギリギリまでひきつけて左に飛んでかわす。

 それが分かっていたかのようにすぐに迫ってくる拳。

 歓喜を抑えきれずにやける顔を押さえられない。

 久々に味わうこのスリル。やめられねぇ。

 わざとギリギリで避け続け、男を見る。

「逃げてんじゃねぇ!!」

 重い拳を刀身で受ける。

 さっき砕けた木刀の、割れた面を男に向けて殴りつける。

 また赤が散る。だが、表情が変わらねぇ。

 っは、なんだこいつも狂ってやがるのか。

 血が飛べば多少なりとも反応はする。だが、この男は一切ねぇ。

 狂ってるのに、この強さ。惜しいことをする。

 距離を取れば、腕に刺さったそれをためらいなく抜き、放る男。

 殺気は止まない。

「てめぇ、なめてんのか」

「なめる?っは、十分に楽しんでんだよ」

「あ?」

「こいつが自ら譲ってくれる機会なんてそうそうねぇからよ。十分に楽しませてくれや!!」

 木刀を握り直し、一気に距離を詰める。

 性懲りもなく拳を突き出そうとする男の顔面に向けて、刀身を突き出す。
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