私たち暴走族と名乗ってもいいですか?(下)

乱入者


 誰も、何も言わない。

 静寂が倉庫を包み、誰も動こうとしなかった。

 カチャリ。

 妙に耳に残る音。そして、どこかで聞いたことがあるような…。

 何気なく向けた視線の先で、信じられないモノを手に取った姿を捉える。

「みんな!しゃがんで!!」

 そう叫んだ次の瞬間。

―バンッ

 運動会の合図の音よりもずっと重い音が倉庫に響き渡る。

 視界の隅で飛び散る赤い華。

 視線だけを向けると、仰向けに倒れていく恭也の姿。

 人が倒れる音。流れ続ける赤。

 こちらに背を向けた夏の顔にも飛んだそれは、紛れもなく血だ。

 2階を見上げると、冷たい目をしたリツキが銃口を恭也へ向けていて、その手をゆっくりと下ろしていく。

 …人を、撃った…?

 ためらいもなく、人を打ち抜いた…?

 あの人は、一体…。
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