夢の続きは隣の部屋で…

拓登の過去

乃里花は勢いよく玄関を閉めると、その場に立ちつくす。よく見ると左足のかかとが靴擦れして赤くなっていた。

「ちょっと痛いなー…って、あっ、あれっっ??」

目の前がかすんで良く見えない。
気が付くと瞳から大粒の涙があふれていた。


私、なにしてるんだろ、、たっくんのこんな姿を見るために、東京にきたわけじゃないのに…
もう訳わかんない。。
ズルズルとその場に座り込むと、拓登と悠果に聞かれないよう声を殺して泣いた。





涙で少し崩れた化粧を落とすため、ヘアバンドで髪をくくり、前髪をサイドで留めて洗面台に向かう。


「はぁ~、やっぱ化粧してない顔のほうが落ち着くな」

鏡には、いつもの見慣れた乃里花の顔が映っていた。
まだまだ幼さが抜けきれないその頬をプニっとつねり、パンパンと軽く叩く。

「よし、もう泣くのはやめ!あんな軽い男こっちから願い下げだっつの!たっくんのことは忘れてやる!!」

幸い、相手は昔のことを覚えていないようだ。今なら乃里花の心がけ次第でなかったことに出来る。『他人』になれる。
乃里花は今まで起きた出来事を忘れようと心に誓うと決めた。




ピンポ~ン♪

ちょうどそのとき、部屋のチャイムが鳴り響いた。

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