ぼっちな彼女と色魔な幽霊

二嶋くんとは、出席番号が一緒だ。

今日は日直で、出席番号が一緒の2人がやると決められていた。

とりあえず8時までに日誌を取りに行かなければならなかった。

時間が近づき、教室に二嶋くんがいないことを確認してひとりで職員室へ取りに行く。

担任の亀山まるみ先生に「二嶋くんは?」と訊かれ、さっき来てましたよなんて適当な嘘を言ったけど、「一緒に来なきゃダメじゃない」と注意された。

新任教師というのもあって、年が近いせいか、生徒にかめちゃんと呼ばれ親しまれてるけど、わたしは先生にも、うまく返事ができなかった。

こんなノート、一人で持つのに十分なのにな。学校には意味のないルールが多く思えるのは、友達がいないせいにも思えて悲しくなる。

他の人なら、こんなところで引っ掛からない。

かめちゃんの机に視線を落とすと、一冊の絵本が目についた。

表紙に彼女の腕が重なっていたけど、人魚が描かれているのが見えた。人魚姫かとすぐにわかったけど、高校で絵本の読み聞かせなんてしないだろうから、何に使うんだろうと疑問に思った。

かめちゃんはその視線に気づいたのか「知ってる?」と訊いた。

腕を離すと、パラパラとページをめくり見せていく。彼女は、海の底を泳ぐ人魚のページで手を止めた。

知ってるも何も有名な童話だ。

冷たい海に住む人魚が人間の世界との関わりを持ってしまった為に訪れる悲劇を描いた話。
< 32 / 333 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop