優しい嘘はいらない

「……覚えてないよ。私、何したの?教えなさいよ」

はあっ〜と溜息をついた志乃。

「どこまで覚えてるの?」

「……五十嵐さんのブランデーを飲んで…背中をバシバシ叩いた事までは覚えてるけど…その後の記憶が曖昧で……」

「お酒に弱いくせにロックで飲んだんだから仕方ないけど…覚えてないなんて……」

おでこに手を当て志乃はあちゃーとつぶやいていた。

「私、何やらかしたの?」

「…いろいろやらかしてたよ。最初は、子供扱いされた延長で言い合いしてたんだけど…問題はその後ね」

志乃は、ベットから降り隣の部屋に移動しながら話しだした。

私も後を追って隣のリビングへ

冷蔵庫から冷たい水のペットボトルを2本出し、ソファーで胡座をかいている志乃に1本渡してテーブルを挟んで向かいあわせに床に座った。

同じタイミングでキャップを開け、ゴクゴクと渇いた喉を潤していく。

なかなか、その後を話し出さない志乃に苛立ち催促する。

「……で、その後は?」

うーんと唸って回想しだす志乃。



『…あんたって性格悪い。勇気を出して告白した女の子に、話した事もないのに俺のどこが好きなの?ってよく言えたね?』
< 19 / 169 >

この作品をシェア

pagetop